2022年4月22日 | TOE
「良いデザイン」と「悪いデザイン」の違いとは?

日常生活には、様々な物や形のデザインであふれていますが、「良いデザイン」と「悪いデザイン」を意識することはあるでしょうか。そもそも「良いデザイン」と「悪いデザイン」の違いを明確に答えられる人は少ないかもしれません。なんとなく「キレイ」だったり「かっこいい」デザインのことを良いデザインだと思っている方も多いと思います。この記事では「良いデザイン」とは何か、そして「悪いデザイン」とは何かを解説し、良いデザインを作るときに考えることとコツについて詳しく解説します。
良いデザインのポイント

「良いデザイン」を明確に定義することは、非常に難しいと言えるでしょう。なぜなら「良い」という判断は、人によって様々だからです。可愛らしいキャラクターに対して、子どもと大人では感じ方が異なるでしょうし、何らかのブランドの衣装を見ても、人によって好みが分かれるでしょう。
しかし、このような議論は、結局のところデザインを見る人の好みを判断しているようなものと言えるでしょう。それでは良いデザインとは何でしょうか。この記事で考える「良いデザインのポイント」について見ていきましょう。
目的に沿っている
「良いデザイン」とは「目的に沿っているデザイン」と言えます。
そもそもデザイナーが物や形のデザインを作るとき、何も考えずにデザインをすることは、ないはずです。先ほどの「可愛らしいキャラクター」の例で考えると、ターゲットである「子ども」に対して「可愛い」と感じてもらうことが目的であれば、子どもから可愛らしいと思われることで、そのデザインは目的を果たしていると言えます。
「かっこいい」と感じてもらいたい人に「かっこいい」と感じられるデザインになっているか、「高級感がある」と感じてもらいたい人に「高級感がある」と感じられるデザインになっているか、デザインのターゲットに対して、デザイナーが意図した目的の通りに感じてもらえるデザインが、良いデザインの条件の一つと言えるでしょう。
レイアウトの基本原則が守られている
プロフェッショナルのデザイナーなら、誰でも知っている「レイアウトの基本原則」があります。これはデザイナーのバイブルともいえる「ノンデザイナーズ・デザインブック」という本で紹介されている4つの原則のことです。
4つの原則とは、コントラスト・反復・整列・近接のことです。本書では、良いデザインの条件として、これら4つの原則が守られていることを紹介しています。
1つ目はコントラストです。コントラストとは目立たせたい部分とそうではない部分に強弱が示されていることです。例えば、目立たせたい部分は文字を大きくして、そうではない部分の文字は小さくするなどです。これらの区別をすることで、デザインを見た人に対して、重要な部分とそうではない部分の違いを明確にできるのです。
2つ目は反復です。反復とは重要度や意味が同じような部分は、同じようなデザインで繰り返すことです。例えばブログのデザインを考えてみましょう。ブログには「見出し」と「本文」があり、「見出し」にも「大見出し」と「小見出し」があります。
この時、同じレベルの「大見出し」には「大見出し」のデザインがあり、別のレベルの「小見出し」には「小見出し」のデザインがあります。ブログには複数の「大見出し」と「小見出し」がありますが、それぞれは同じデザインで繰り返されていることが一般的です。このように同じ種類の情報について、同じデザインで繰り返すことを反復といいます。
3つ目は整列です。整列とは情報の要素をそろえることです。たとえばWebページのデザインで、文字列を左揃えに揃えたり、中央揃えに揃えたりすることが整列と言えます。1行目は左揃えなのに2行目が中央揃えになっていると、見る人によっては違和感を覚えるでしょう。そのような違和感を与えないためには、情報を整列させることが重要です。
4つ目は近接です。近接とは情報をグルーピングして整理することです。関連する情報をまとめて近接させ、関連しない情報とは離します。これにより、どれが類似する情報で、どれがそれらとは異なるのかをデザインを見る人に認知させる効果が生まれます。
配色でイメージを表している
デザインではレイアウトだけでなく配色も重要です。色によって見る人に与えるイメージは大きく異なります。例えば青色は涼しくてクールなイメージがありますし、赤色は熱く情熱的なイメージを与えます。
一口に色といっても、色相・彩度・明度と3つの属性があります。この3つは色の三属性とも呼ばれ、配色を考える際には欠かせないものです。色相とは青や赤などの色味のことであり、彩度は色の鮮やかさ、明度は色の明るさを表しています。
複数の色を組み合わせる配色においては、彩度や明度が異なっていても色相が同じなら同じような印象を持つ配色になりますし、色相が異なる色同士で彩度や明度を合わせた配色も使われています。
また、明るい色は膨張して見えて暗い色は縮小して見える、彩度が高い色は派手に見えて彩度が低い色は地味に見えるなど、色彩が人間に与える心理はさまざまです。これらの配色を使いこなして、見る人に対して与えるべきイメージを的確に与えられていることも、良いデザインの条件と言えるでしょう。
適切な書体が使われている
レイアウトや色に加えて、文字が与えるイメージもデザインの重要な要素です。文字の形のことを書体と言いますが、これには非常に多くの種類があります。書体は「ゴシック体」と「明朝体」の2つに大きく分けることができます。
ゴシック体とは文字を構成する線の太さが同一の書体であり、明朝体とは文字を構成している部分によって線の太さが異なる書体のことです。
一般的にはゴシック体は力強くてインパクトがあり、明朝体は上品で高級感があると言われています。文字が含まれているデザインを制作するときには、書体が与えるイメージの違いを十分に考慮する必要があります。
悪いデザインとは?

ここまで良いデザインのポイントを解説してきました。それでは良いデザインの対極にある悪いデザインとは一体何でしょうか。良いデザインの一つ目のポイントとして、目的に沿っているということを紹介しましたが、その考え方を応用すれば、悪いデザインとは目的に沿っていないと言えるのではないでしょうか。
デザインが目的を果たすものだと考えると「なぜこの場所の色は赤なのか?」や「なぜこの文字は大きいのか?」などのデザインの理由に対する明確な答えがあるはずです。言い換えると、良いデザインには良いデザインなりの答えがあると言えるでしょう。
デザインが人に与えるイメージをコントロールするには、レイアウト・配色・書体などの要素を整理する作業が必要です。デザインをするとは、これらの情報を整理する作業そのものとも言えます。悪いデザインが目的にあっていないデザインだとするならば、つまりそれは情報が整理されていないデザインと言えるのかもしれません。
良いデザインにするときに考えること

良いデザインのポイントと悪いデザインについて考えてきました。もし何かをデザインするのであれば、良いデザインにしたいと思うのが自然でしょう。そこでここからは、良いデザインにするときに考えるべきことについて解説します。
デザインのターゲット
良いデザインには、明確なターゲットが考えられています。物や形をデザインするとき、利用者の性別や年齢、職業などを考えて、その利用者にとって相応しいデザインを制作します。デザインというと、すぐに見た目を考えたくなりますが、まずはデザインのターゲットを明確にすることが重要なのです。
デザインの用途
デザインのターゲットが決まったら、そのデザインの用途を決めます。例えばWebサイトをとっても、リクルートを目的としているのか、営業を目的としているのかでコンテンツが異なるでしょう。コンテンツが異なれば、レイアウトや配色のコントロールも必要です。用途によって見せ方を変えることも、良いデザインを制作する時には必要です。
デザインのシチュエーション
デザインを見る人のシチュエーションを考えることも良いデザインを作るときには必要です。例えば、明るい場所で見せるデザインと、暗い場所で見せるデザインは異なるはずです。Webサイトでも、パソコンで見るときとスマートフォンで見るときとでは、レイアウトが大きく異なります。作るときに見る人のシチュエーションまで考えられたデザインであることも、良いデザインの条件の一つと言えるでしょう。
デザインが貢献できること
最終的には、デザインが貢献できることまで考えられているデザインが良いデザインと言えます。例えば、求人募集のWebページのデザインが貢献すべきことは、求職者からの応募ですし、ECサイトのデザインであればお客様からの商品の注文です。デザイナーは、デザインを通じて貢献すべきことに貢献できることが、プロフェッショナルと見なされるための条件です。
良いデザインにするコツ

良いデザインにするために考えるべきことを紹介しましたが、いきなり良いデザインを作るのは難しいでしょう。そこでここでは、良いデザインにするためのコツをご紹介します。
発注者とデザイナーとでイメージを共有する
良いデザインにするためには、発注者とデザイナーの双方がデザインのイメージを共有することが重要です。特に言葉や文字で表しにくいグラフィックデザインでは、デザイン制作前のイメージの擦り合わせが不十分だと「なんだか思っていたのと違う」という結果になりかねません。発注者が思い描いていたイメージ通りのデザインを制作するには、徹底したイメージの共有が欠かせません。
適切にフィードバックする
デザイナーが制作したデザインに対して、適切にフィードバックすることも良いデザインにするコツの一つです。デザインが与える印象は人によって異なりますが、デザイナーにフィードバックするときには、できるだけ一つの意見に集約し整理してからデザイナーに伝えましょう。フィードバックの内容がバラバラだと、受け取るデザイナーが混乱して、デザインの方向性が一つにまとまらないからです。
まとめ
良いデザインと悪いデザインの評価は見る人によって異なるかもしれません。しかしデザインに明確な目的があれば、デザインで表現すべきことの方向性はある程度は決まります。この記事では、目的に沿っているデザインが良いデザインであることを紹介しました。良いデザインを制作するときには、目的を果たせる魅力あるものになっているかどうか、第三者の意見なども踏まえて、じっくりと評価することをおすすめします。